チベット仏教普及協会
《ポタラ・カレッジ》
【2019年6月9日最終更新】
お蔭様で、全ての行事は無事に成満しました。ありがとうございます。
2019年は、チベット仏教ゲルク派宗祖 ジェ・リンポチェ・ツォンカパ大師ロサン・タクペーペル(1357-1419)の600年御遠忌にあたる年です。
ポタラ・カレッジでは、記念の特別行事として、ゴールデンウィークの超大型連休に、本会会長ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師による密教伝授等を実施しました。
法話や灌頂法儀の説明は、ゲシェー・ソナム師自身が日本語で行ないました。通訳なしで灌頂を受法できるのは、とても貴重な機会だといえるでしょう。
ジェ・ツォンカパ大師(ポタラ・カレッジ所蔵のタンカ)
平成31年4月30日(火・休)午後2時〜5時 密教の灌頂を受法するためには、「ラムリム」など顕密共通の道をよく学修していることが必要ですが、その内容を直前に再確認して入壇の心構えを確立するため、大阿闍梨自身による前行法話を実施するのが伝統になっています。今回は、ツォンカパ大師が顕密共通の道を出離・菩提心・正見という三つの要点からまとめた「道の三要訣」をテーマに行ないました。
◎ 参考図書:『チベット仏教 文殊菩薩の秘訣』(ゲシェー・ソナム・ギャルツェン/法蔵館)
令和元年5月1日(水・祝)午後3時〜6時 文殊師利は、あらゆる仏陀の智慧を一身に体現した本尊で、それを分かりやすく示すため、菩薩の姿をとって現われるといいます。ツォンカパ大師は、そうした文殊の化身だと信じられています。それゆえ、ツォンカパ大師の600年御遠忌という記念すべき年に、文殊菩薩の許可灌頂を実施したのは、とても素晴らしい仏縁になるでしょう。
今回厳修したのは、無上瑜伽タントラに基づく獅子吼文殊師利と結縁する許可灌頂です。あくまで大乗仏教の修行のために智慧を高めることが本義ですけれど、副次的には学業成就などの御利益も期待できます。
◎ この許可灌頂の受者を主な対象とする、夏の特別講習「獅子吼文殊成就法」を、7月15日(月・祝)に実施しした。こちらを御覧ください。
獅子吼文殊と明妃サラスヴァティー(ポタラ・カレッジ所蔵ツァカリより)
【ポタラ・カレッジ会員限定】
準備行(タグン)5月2日(木・休)午後2時~6時
正行(グーシ)5月3日(金・祝)午後2時〜7時
ヤマーンタカ(大威徳)は、仏陀の智慧の体現者である文殊と一心同体の本尊です。死神のヤマ(閻魔)を調伏するために、恐ろしい忿怒の姿を現わしています。深い意味で解釈すれば、閻魔は生死輪廻をもたらす無明であり、それを調伏するというのは、空性を覚る智慧によって無明を断滅することにほかなりません。激しい忿怒の行相でそれを行なうのは、密教の強力な手段で速やかに無明を根絶することを示しています。一般的な意味で解釈すれば、ヤマーンタカの絶大な威力により、死魔を始めとする修行の障礙を取り除くという趣旨になります。
金剛バイラヴァ 一尊(大阿闍梨チャト・リンポチェ猊下御持参のタンカより)
ヤマーンタカの中でも、特に金剛バイラヴァは、ツォンカパ大師と一心同体の守護尊であるため、ゲルク派密教に於ける無上瑜伽タントラ三大本尊の一つとして、極めて重要視されています。金剛バイラヴァは、水牛の忿怒相を中心とする九面、三十四臂、十六足という、非常に複雑な姿をしています。そうした姿にも、様々な象徴的意味が込められています。金剛バイラヴァの生起次第と究竟次第には、「グヒヤサマージャ(秘密集会)」聖者流に近似しているという特色もあります。
金剛バイラヴァの行法にも、十三尊と一尊の二種類があります。一尊は、曼荼羅の中心に主尊金剛バイラヴァだけを生起し、それも母尊を伴わない単独の行相で修習します。「グヒヤサマージャ」聖者流に近似した深遠な行法であるにもかかわらず、簡潔でわりと実修しやすい特長があります。そのため、ゲルク派の名だたるラマたちも、グヒヤサマージャ聖者流をよく学び、ヤマーンタカ 一尊を徹底的に修行する・・というスタンスの方が多く見受けられます。今回大阿闍梨を勤めるゲシェー・ソナム・ギャルツェン師が、三年間に渡る大親近行を実修した際の本尊も、このヤマーンタカ 一尊です。文殊とヤマーンタカの化身である宗祖ツォンカパ大師の600年御遠忌にあたり、ヤマーンタカ 一尊の徹底的な修行を成満したゲシェー・ソナム師から大灌頂を授かったのは、とても素晴らしい御縁だといえるでしょう。
ヤマーンタカ 一尊大灌頂正行
これから受者全員が投華得仏の御縁を授かるにあたり、大阿闍梨が本尊曼荼羅の御前で願文を奏上。
5月4日(土・祝)午後3時〜6時 無上瑜伽タントラに基づく金剛薩埵父母尊の許可灌頂です。無上瑜伽タントラの場合、金剛薩埵は、第六部主の持金剛と同一視されますが、この許可灌頂の金剛薩埵父母尊は、百字真言の念誦による懺悔・浄化の行法の本尊ともなるものです。特に、無上瑜伽タントラの三昧耶戒の違越を浄治する際の金剛薩埵は、必ず父母尊でなければならないとされています。
懺悔・浄化の行法については、2019年4月下旬からの定期講習「前行道場 金剛薩埵」で、ゲシェー・ソナム師自身が詳しく実践指導しました(こちらを御覧ください)。許可灌頂は、懺悔・浄化の修行のために必須ではありませんが、今回受法したことにより、本尊の加持力が強くなるのは言うまでもないことです。
金剛薩埵父母尊(ポタラ・カレッジ所蔵タンカより)
5月5日(日・祝)午前11時〜午後6時 講師:齋藤保高
今回の「ヤマーンタカ 一尊大灌頂」受法者の三昧耶(誓約事項)となる「六座グルヨーガ広本」と「ヤマーンタカ 一尊成就法略本」の行法を、初心者にも分かりやすいように、なるべく平易に解説しました。ただ、1日だけの講習では最低限の実修法しか説明できていませんので、成就法について詳しく学修したい方は、「ヤマーンタカ 一尊」に関する2つの定期講習のいずれかを受講されるようにお勧めします(こちらを御覧ください)。
1955年、チベット本土のティンリ村に生まれる。中国のチベット侵攻により、少年期にインドへ亡命。'73年より、ダライ・ラマ法王仮宮殿のお膝下に新設されたダラムサラ仏教論理大学で、チベット仏教の伝統的な学問と修行を積む。'83年に来日。日本仏教を学び、比較研究を行なう。'92年、大正大学大学院文学研究科博士課程(仏教学専攻)満了。ダライ・ラマ法王日本代表部事務所(チベットハウス)文化交流担当となり、'98年まで勤務。現在、チベット仏教普及協会(ポタラ・カレッジ)会長・主任講師。照光精舎宗教文化研究所研究員。'96年、ゲルク派大本山デプン寺ロセルリン学堂にて、「ゲシェー」(仏教哲学博士)の学位を取得する。2011年秋から三年間の大親近行(密教の集中的な瞑想修行)に入り、’14年秋に付加行の護摩を伴い満願。
ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師
今回の密教伝授に於ける「ヤマーンタカ 一尊」など、無上瑜伽タントラの大灌頂をポタラ・カレッジで実施する場合、次のような点を中心に受法資格を審査しています。
1.顕密共通の道として、「ラムリム」などをある程度学修していること。
2.大灌頂受法後は、三昧耶(誓約事項)として「六座グルヨーガ」を毎日昼夜に修行する(「ヤマーンタカ 一尊」では、それに加えて「成就法略本」を毎日修行する)と誓えること。
これらは、本会で勝手に決めていることではなく、様々な教証に基づいて伝統的に守られてきた基準です。
受法希望者は全員、事前に本会会長ゲシェー・ソナム・ギャルツェン師と面談していただき(遠方の方は電話でも可)、上記2点についてお一人づつ状況とお考えを伺ったうえで、受法を承認するようにしています。こうした方針は、以前から行なってきたことであり、今後も同様です。
「将来、無上瑜伽タントラの大灌頂を受けたい」とお考えの方は、日頃から「ラムリム」や「ロジョン」などの教えを学修するように心がけておいてください。
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